2014-02-03

Read: Stiles et al. (2005) Auk "Wing morphology and flight behavior of some north American hummingbird species"

Stiles, F. G., Altshuler, D. L. & Dudley, R. Wing morphology and flight behavior of some north American hummingbird species. Auk 122, 872–886 (2005). doi: 10.1642/0004-8038(2005)122

ひとまず Abstract と Discussion のみ読んだ。あとで全部読む。

北米の数種類のハチドリの翼形状を調べた研究(死骸から)。大きな発見は、成熟したオスの翼が未成熟のオスやメスの翼よりも小さいということ。より正確には、短い上に、AR (aspect ratio) も小さい。したがって翼面荷重 (wing loading) は大きい。この、雌雄での大きさの逆転 reversed sexual size-dismorphism はどうも北米のハチドリに特有な物らしい。

どうやら、そもそも論としてナワバリ内での活動頻度的なものが、wing disc loading (WDL, 翼が掃く面積で体重を割った値 訂正:wingbeat amplitude = 180 deg と仮定して、wing length を半径とする円盤面積で体重を割った値だった) と相関しているだろう、という仮説があったらしい。実際、成熟したオスでは高翼面荷重かつ WDL も高いのでそれっぽく思えるが、未成熟のオスでは WDL が小さいのでこの仮説は棄却された、としている。

結局、この成熟したオスの翼が小さいのはじゃあなんなのか、という答えとしては、メスに対するディスプレイ飛行のためではないか、特に、 sound generation かもしれない、ということになっている。どうも多くの北米の種では primary feather の長さ自体にも(オスのみで?)特徴があるようだ。一部だけ短かったり。それが音を出す役に立ってるかもよ、とかそういう話。この音関係の話は Science に2011に出ている のであとでフォローするつもり(短いしね)。

ただ、Dudleyらしく(?)、パワの話や機動性の話については慎重で好感が持てる。成熟したオスでは翼がより短いが、ARは大きくテーパもきつい。未成熟のオスやメスの翼に比べると、disk loading が大きいため(Discussionにはそう書いてないがたぶんResultsにある)sqrt( disk loading ) で効く induced power も大きいはず。だが、third moment of wing area で効く profile power は小さいはずと。一方で inertial power については、これは質量分布が効くのだが、骨や筋肉は wingbase 付近に集中しているので、なんともいえない(ここがまず humble でよい)。さらに、こういうことが相対的に・定性的に言えたとしても(そもそもそれも implications という控えめな表現)、直ちにそれが機動性に繋がるかは一概には言えないよとしている。たとえば、翼が長いということは慣性モーメントが大きいので一見ロール機動が遅いようにも思えるが、重心から風圧中心までの距離(モーメントアーム)も大きくなるだろうから、空気力によるトルクも増大すると予測できて、結局機動性がどうなるかはわからんよと。すばらしい。でもアクセプトまでに1年くらいかかってることを考えると査読で突っ込まれたのかもしれない。言い過ぎだろ、とか。

結論として、従来のような actuator disk では現実の行動まで説明するには不十分で、より詳細な運動データや力の情報が必要としている。それ自体は「待ってました」というところなのだが、問題は "during maneuvering in different, ecologically and behaviorally meaningful contexts" での計測をよろしく、という付帯条件。これはそうとう難しい……。そりゃ彼らも実験室ではこの時点ですでに飛ばしているわけで、そうだよな、というところではあるけれども。

自分の感想を付け加えると、死骸でいいのか?っていうことがある。ただ、一応、個々の羽根は死後でも乾燥したりはほとんどしないらしい(山階鳥類研究所スタッフ談、pers. commun.)。それに、著者らも認めているように(だがそれ以上に我々の方が詳しいように)、翼運動 (wing kinematics) が空気力発生には圧倒的に重要なのは間違いない。静的な計測はもういいでしょ、動きを測らないと、というのは当然の流れで、したがって2年後の2007にTobalske et al. のエポック的な(僕の中で)Three dimensional kinematics of hummingbird flight が出てくるのは自然だったのだろう。一方 Warrick は同じ2005に PIV をしていた。やっぱ進んでたわけで、そりゃ Nature だなぁ。



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