流れ中に置かれた物体にはたらくトータルな流体力 (resultant fluid dynamic force) のうち、ある基準の流れ方向と垂直な方向の成分を揚力 (lift) という。平行な成分は抗力 (drag) と呼ばれる。次元は [力 (force)] であり、SI でいうと N (ニュートン, := kg m/s2) にあたる。
- 流体力 R
- 揚力 L
- 抗力D
- 基準流れ方向と、流体力ベクトルとがなす角度 θ
L := R sinθ
D := R cosθ
と表せる。発生原理
定義によると、揚力は全流体力の成分にすぎない。したがって、まず流体力がどのように発生するか考えるのが自然だろう。
周囲の流体が物体に力を与えるには2とおりの方法がある:
- 圧力
- せん断応力
ここからわかることのひとつは、しばしば言われている「揚力は翼上下面の圧力差によって生じる」という statement が、実は(数値のオーダという意味ではほとんど正しいのだが)厳密には不十分だということだ。この statement が真であるのは、圧力のみが揚力に寄与するとき、すなわち、せん断応力ベクトルの積分が、基準流れ方向の成分しか持たない(かゼロである)ときのみであるが、実際にはせん断応力を積分すると揚力方向成分がゼロになるという保証は無い。一般にはならないだろう。
とはいえ、現実にも、せん断応力の成分は絶対値自体がまず小さいし、しかも多くの場合基準流れと垂直な(つまり揚力方向の)成分もあまりもたないため、このような近似が広く言われている (Anderson 1999)。
<<中略>>
ベルヌーイの定理はもちろん間違ってないし、ベルヌーイの定理でも「(準)定常」飛行時の揚力はほぼわかる。
まぁ、定理が間違っているとかあってるとか言う人はほとんどいないだろうけど。
ほぼ一様な、ほぼ定常かつほぼポテンシャル流れに対して、ほぼ一様な流れ方向を対称軸として、物体を上下非対称になるように置く(翼の場合「迎え角を付ける」 and/or 「キャンバを付ける」ことで行う)
↓
境界層の外側はやっぱり「ほぼ定常・ほぼポテンシャル流れ」なので、ある一本の流線に沿ってベルヌーイの定理を適用してもほぼ正しい
↓流れが上面では加速しつつ下面では減速しつつ曲がる → 加速してる上面にだけ着目する(∵上面での加速の方が下面での減速よりも大きく、支配的であるため)
↓ベルヌーイの定理から加速しているところでは同時に圧力が下がっていることがわかる(どっちが先とかいうことはない。ベルヌーイの定理は因果関係に言及していない)
↓圧力は境界層内の物体表面にまで伝播する(しない理由がない)
↓物体表面ではせん断応力の合力である摩擦力も出ているけど、揚力方向成分は小さいので無視してもほぼ変わらないかな的な
↓上下面での圧力差がほぼ揚力になる
え、待って、じゃあ非定常は...?
注意すべきは、以上は飽くまで「亜音速・低迎え角・(準)定常飛行時における、中-高 AR な翼に適用してもほぼいいだろう的な発生原理」である点。たとえば離着陸時のデルタ翼だとか、もっと行っちゃって羽ばたき翼みたいな「なまら非定常」な流れだとかにおいても、同様の原理で流体力(もちろん垂直成分も)を発生させている保証はないし、実際にだいぶ違うことがわかってきている。すなわち、
- dynamic [delayed] stall
- LEV (leading-edge vortex) and axial flow in the core
- TEV (trailing-edge vortex)
- SLV (shear layer vortex)
- wake capture
- clap & fling
- rotational lift
- passive/active wing morphing
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